Arvo Pärtとティンティナブリ様式

今回は最近聴いて衝撃を受けた現代音楽家Arvo Pärtとその音楽について調べたことをご紹介します。

 

Arvo Pärtについて

Arvo Pärtはエストニア出身の現代音楽家です。

現代音楽といったらやっぱり難解なイメージですよね。Arvo Pärtも最初こそ偶然性を取り入れた音楽、コラージュ、十二音技法など現代音楽の文法を使用していたそうです。

しかしある時、ラジオでグレゴリオ聖歌を聴き、啓示を受けたそうで、8年間もの間作品を発表しない沈黙期間に入ります。そこで教会音楽などの古楽の研究に励み、ティンティナブリ様式と自ら呼ぶことになる音楽を携えて音楽界に戻ってきました。

その様式による音楽は、現代音楽の難解なイメージにそぐわないもので、非装飾的、それでいて至上の美しさと強度を兼ね備えている音楽でした。この沈黙期間以後の作品は大きな賛辞と共に聴衆に迎えられることになります。まさに温故知新ですね。

氏が古楽に学んだように、私も様々な物事を古典から学ばねばならないと思う今日この頃です。

 

音楽の特色

8年間もの沈黙期間を要した音楽とはどのようなものだったのか。それはArvo Pärt自身が「白色光」に例え、聴衆の多くが「静謐」と形容するような音楽でした。

例えば、沈黙を破って初めに発表されたピアノ曲「Für Alina」はピアノによる二つの旋律が並置されているのですが、複雑なリズムや大きな旋律の跳躍など装飾的な動きは一切ありません。これ以上ない程切り詰められた音楽です。しかし皮相的なヒーリング音楽などでは決してなく、深い精神性を伴っています。この削ぎ落とされた音楽がArvo Pärtが時折ミニマリズムの音楽家として名前があがる由縁です。

またミニマルな曲だけでなく、沈黙期間の研究成果が遺憾無く発揮されている「Te Deum」など荘厳な聖歌や宗教曲も沢山作曲しています。

以前本を紹介した哲学者佐々木中さんと純文学作家の古井由吉さんの対談で、「藝術というものは論理で、知で、詰めて詰めて詰めて……詰めて、そこで一滴だけ滴る鮮血のようなものが叙情であり、理性の彼方になるもの」という言葉がありました。氏の曲の中でも著名な「Tabula Rasa」などを聴くと、まさにその境地に辿り着いた音楽だと思います。

何度聴いても精神が高揚するのを感じます。

 

ティンティナブリ様式とは

ティンティナブリとはラテン語で「鐘」を意味します。この様式について基礎的な部分について調査してみました。

Tintinnabuli-voiceとMelodic-voice

基本的な三和音を受け持つ声部をTintinnabuli-voice(以下T-Voice)、音階の特徴を持つ声部をMelodic-voice(以下M-Voice)と便宜上名付けます。この二つが一定の規則に従って結びつくことで鐘のように複雑な美しい響きが得られます。

ちなみにArvo PärtはT-Voiceを「原罪、現実」、M-Voiceを「赦し」とみなしていたようです。

それではそれぞれの声部について説明を加えます。Aマイナースケールを例にとって説明します。

 

M-voiceの動き

M-voiceは基本的にスケールを順次進行するようになぞる声部です。音階の中心音を意識させるような動きをします。そのため最初の音や最後の音で音階の中心音を強調するような旋律が用いられるようです。Aマイナースケールだと次のような旋律ですね。

厳格な曲では上記の旋律を守ることになります。上記の中でも繋がりやすさなどがあるようです。

 

T-voiceの動き

M-voiceの周囲を寄り添うようにスケールの中心音の三和音を鳴らす声部です。AマイナースケールだとAmですね。T-voiceはM-voiceを離れ過ぎないよう動きます。そのため位置関係は次の4つのようになります。

  • M-voiceの上をなぞる、1番目に近い音
  • M-voiceの上をなぞる、2番目に近い音
  • M-voiceの下をなぞる、1番目に近い音
  • M-voiceの下をなぞる、2番目に近い音

次は説明でよく使用される譜例です。四分音符符頭がT-voice、全音符符頭がM-voiceを表します。

T-voiceは上記4つのポジションから音を選択できるので、M-voiceより自由度の高い旋律が作られます。

 

ティンティナブリ様式で曲を作ってみる

上記の知識を踏まえてなんちゃってですが、練習がてらピアノ曲を作ってみました。

厳格にティンティナブリ様式を守れているわけではないと思いますが、なんとなくそれっぽく聞こえるかなと思います。Eマイナースケールです。

00:00〜02:10

M-Voiceは8小節毎に主音から上昇下降、主音から下降上昇を繰り返すのみの旋律です。この音形は最後まで繰り返すことになります。この旋律の区切りのタイミングで主音であるEを低音でオクターブで鳴らしています。

そしてT-Voiceを8分にしてみたり、3連にしてみたりとバリエーションをつけてみています。

 

02:11〜3:17

M-Voiceを早く動かしてみています。

途中でE音ばかり鳴らしていた低音をスケールにそって下降させています。M-Voiceのような旋律が二つになるイメージで試してみたのですが、ここは厳格なティンティナブリ様式を破っているのかもしれません。

 

3:18〜3:42

最後は無理くり終わらせにいきました(笑)

 

まとめ

今回はArvo Pärtとティンティナブリ様式ついてご紹介しました。

私は西洋音楽や現代音楽について恥ずかしいほど知らないのですが、氏の音楽にはそんな私でも虜にしてしまう普遍性があると思います。

良かったら一度聴いてみてください。

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